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、すぐさま鈍い影を帯びていく。

 用意された夕餉を早々に食べて、狭霧は寝床に横になった。

 先ほど耳にした話が本当なら、今に、いにしえの森で狭霧の足を動けなくした大和の術者がここに来るはずだ。明朝、大和へ旅立つ船へひそかに狭霧を乗せるまで、眠らせておくために――。

 外からの光が薄れると、明かり取りの小窓の他に灯かりをもたない狭霧の居場所は、真っ暗になる。暗闇の中で、緊張に震えながら掛け布にくるまっていると、狭霧は、不思議な風が吹いたのを感じた。

 香りもなく、ぬるさや冷たさもべつだん感じないが、いやに重くて濃い風だった。何も知らなければ、「へんな風」と首を傾げて終わったかもしれないが、今は、正体に思い当たった。
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(高比古が、言霊(ことだま)っていうのを使った時に似てる……。きっと、眠りの風だ。術っていうのをかけているんだ)

 掛け布の中で、狭霧の腕の内側は赤く腫れていた。手には、咄嗟につくりあげた器の破片がある。鋭い角を肌に押しあてていると、ふとした隙にぼんやりと気が遠のきそうになるのをこらえることができた。

 異様な眠気と闘っていると、ある時、堅薦の向こう側……館の外の庭あたりで、人が増えたり減ったりする気配を感じた。そこを出入りする人たちは、揃って戸惑いや焦りじみた雰囲気をまとっている。

(きっと、わたしに術をかけるのがたいへんだっていう相談をしているんだ。人が少なくなった気がするけど、手助けを呼びにいったのかな。どうしよう……術者の数が増えたら、やっぱり術っていうのは強くなるのかな。わからないけど……)

 もし、考えているよりもっと酷いことが起きたらどうしよう。

 もしも、根本的なことを間違えていたら?

 器のかけらで肌を傷つけたり、寝床にひそんだり……本当にこれでいいの? ほかに、どうすればいい? どうすればここを逃げられる?

 疑問は次から次へと湧き出てくるが、現状をろくにわかっていない狭霧には、返せる答えがなかった。ただ、知らないということに、痛烈に脅えた。

(どうしよう……いたっ!)腕時計 casio
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 思い悩んでいるうちに、破片の角を強く押し過ぎてしまった。肌にちくりと刺さった鋭い角は容赦なく食い込んで、ぬるい雫がじんわりと浮き上がる。真っ暗闇にいるせいで色は黒く見えているが、その雫は赤い色をしているはずだ。血だ。

(やりすぎちゃった……いいわ。これでしばらく眠らなくて済むかも……)

 血をぬぐおうと、掛け布の端を手首に近づけたところだった。何かが目に入った気がして、狭霧はぽかんと闇の中に見入った。

 それは、手首のあたり。狭霧の手首を締め付けることもなく、つかず離れずの場所で輪っかをつくる紐だった。闇の中にいるせいで色は黒ずんでいるが、もとは鮮やかな黄色をしているはずだ。出雲の軍旗と同じ、強い黄色を。

(高比古……)

 この紐を手首に結わえた時、高比古は狭霧を守るように念を込めたといっていた。彼がくれたものなら……出雲随一の事代(ことしろ)の力をもってすれば、どうにか今の窮地を脱せるのではないのか。

 まぶたを閉じた狭霧は、わらにもすがる思いで、腕に巻いた染め紐へ額を近づけた。

(お願い、助けて。ここにあなたの力が宿っているなら……!)

 でも、はっと我に返る。そして、お願いとすがりついたことをたちまち悔やんだ。

 脳裏に浮かんだ高比古の顔は、鬱陶しそうな渋面をしていた。忌々しげに舌打ちをして、狭霧を嘲っていた。そのうえ、狭霧は高比古の、相手を蔑むような冷たい声までを思い出した。

 人に頼るだけで、自分では何もしないのか――?

 手首に巻いた紐を見ているうちに、高比
by lookxh | 2013-09-18 12:42